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もし炭治郎が、日の呼吸の適性が最適最強だったら その11

 

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ライトノベル作家のshiryuです。鬼滅の刃のSSを書きました。炭治郎がもしも最初から最強だったら、というものです。鬼化…

 

 


 

 そして僕達は、炭治郎さんの元で修行を行った。

 

 だけど、炭治郎さんは……人に物を教えるのが、壊滅的に下手だった。

 

「肺を大きくする感じで、ぐわーってするんだ。そしたら骨と筋肉がブオンブオン! ってなるから……」

「……」

「……嘘だろ」

 

 僕は絶句、兄さんは小さくそう呟いた。

 

「……ごめんね」

 

 

 炭治郎さんは多分、天才肌というやつなのだろう。

 

 呼吸というものを、やろうと思った時には出来ていたらしい。

 炭治郎さんは小さい頃に一人で山をずっと駆け回ったことがあって、その時は24時間走っても息切れをしなかったようだ。

 

 炭治郎さんが使う日の呼吸、通称ヒノカミ神楽をずっと踊っていても、全く疲れないらしい。

 

 僕達はそれを見してもらったけど、やはり綺麗で、太陽みたいだった。

 

 だけどそんな炭治郎さんがまさか、教えるのが下手だったなんて……。

 

「可愛い」

「えっ?」

 

 僕の一言を聞いた兄さんが、驚きの声を上げた。

 

 だって、あんなに優しくて強くてカッコいいのに……身振り手振りで教えようとする姿が、なんとも可愛らしい……!

 

 ずるいよ、炭治郎さん……!

 

「うーん、どうしようか……あっ、そうだ! カナエさんなら、継子もいるししっかり教えてくれるかも!」

「僕達は炭治郎さんに教わりたいだけど……」

「……まあ、仕方ないよな。あんなに下手だとは思わなかったんだから」

「……本当にごめんね」

 

 ということで、全集中の呼吸などは、花柱である胡蝶カナエさんに教わることになった。

 

 さすがに妹のしのぶさんを継子にしているので、カナエさんは教えるのが上手かった。

 

 そして僕達は、他の人よりも才能があることを知った。

 

「すごいわねー。たった2ヶ月でここまで強くなるなんて」

 

 僕達は普通の人が2年、3年もかかるといわれる強さに、たった2ヶ月でなってしまったらしい。

 

 めちゃくちゃ鍛錬は厳しかったし、死ぬほど努力した結果だと思う。

 隣に兄さんがいてくれたから、一緒に頑張れた。

 

 兄さんも僕と同じぐらい強くなった。

 それに僕達二人は、「霞の呼吸」という新しい呼吸を編み出した。

 

 本当は炭治郎さんが使っている日の呼吸を使いたかったけど、僕達は出来なかった。

 それに花の呼吸も僕達には合わなかった。

 

 だから不死川という柱の人に教わった時に見た、風の呼吸から派生したものを作った。

 

 僕達にはそれが合っていて、それを編み出してから飛躍的に成長したと思う。

 

 実際、霞の呼吸を覚えたのは鍛錬を初めて1ヶ月くらいだ。

 そしてそれを覚えてから、僕達はすぐに最終戦別に参加した。

 

 普通の成長速度ならば来年の最終戦別に行くかどうか、ぐらいだけど、僕達は1ヶ月で最終選別に行った。

 特に怪我もなく、僕達はそれを突破した。

 

「兄さん」

「ああ、いくぞ」

 

 そして鍛錬を始めてから2ヶ月。

 

 僕と兄さんは、炭治郎さんの屋敷の庭で木刀を持っていた。

 

 二人で戦うわけじゃない。

 戦う相手は……目の前で木刀を持っていない、炭治郎さんだ。

 

 とても可愛らし……素敵な笑みを浮かべているのだが、隙が見当たらない。

 

 僕達も強くなって、次期柱と言われるほどの実力を身につけた。

 だからこそ……炭治郎さんとの力の差が、わかってしまう。

 

「霞の呼吸、壱ノ型――垂天遠霞」

 

 まず兄さんが先陣切って、炭治郎さんに攻撃を仕掛ける。

 霞の呼吸の、唯一の突きの技。

 

 首元を狙っていたが、炭治郎さんは軽く身を傾けるだけで避けた。

 その顔にはまだ笑みがある。

 

「霞の呼吸、肆ノ型――移流斬り」

 

 次は僕が炭治郎さんの足元に滑るように潜り込み、斜めに斬りあげて胴体を狙う。

 胴体を狙うことで避けるのを難しくしたはずだが……後ろに一回転するようにして避けられてしまった。

 

 その後も……僕と兄さんは呼吸の型を使って攻撃をしかけるけど、全く当たる気配もない。

 

 30分ほどして、炭治郎さんが僕達に同時に足払いして、僕達が倒れたところで戦いは終わった。

 

「はぁ……やっぱり炭治郎さんには敵わないや」

「強すぎだろ、本当に……」

 

 さすがに30分だけ戦っても息を切れるほど疲れないが、どれだけ技を繰り返しても当たらないというのは、なかなか精神的に疲れる。

 全部全力なのに、全部外すんだから。

 

「二人とも、本当に強くなったね。1ヶ月前とは大違いだ」

 

 確かに最終選別に行った時よりも、比べ物にならないくらい強くなったはずだ。

 その時は全集中の呼吸・常中をしていなかったから。

 

 だけどそれを覚えたのに、炭治郎さんの足元にも及ばない。

 

「花柱のカナエさんには、二人がかりだったから勝てるのになぁ」

「えっ、本当に? すごいね、二人はもう柱になれる実力を持ってるんだ」

「あんたに言われると、嫌味に聞けるけど」

「もう、兄さん! 炭治郎さんがそんなこと言うはずないじゃん!」

 

 僕達は鬼殺隊の歴史の中でも、多分上位の方で規格外な成長をしているのだろう。

 

 だけど、炭治郎さんほどでもないのは確かだ。

 

 前に蝶屋敷で聞いた噂が、全て本当だったというのだ。

 

 いわく、鬼殺隊に入ってないにも関わらず、上弦というとても強い鬼を倒した。

 いわく、お館様の推薦で全く訓練を受けずに鬼殺隊に入り、すぐに柱になった。

 いわく、柱になってから数ヶ月、任務は人並み以上に行っているのに、かすり傷すら受けていない。

 

 その噂は、全て真実だという。

 

 僕達は最近、二人で下弦を倒した。

 やっぱり他の鬼とは強さの桁違った。

 

 そこまで苦戦しなかったけど、上弦はあれの何倍も、何十倍も強いという。

 

 それを炭治郎さんは、鬼殺隊に入る前に一人で倒したというのだ。

 規格外でしかない。

 

 

 それと……今日、僕達は炭治郎さんに聞きたいことがあった。

 

 ずっと聞きたかったけど、聞けなかったこと。

 

「ねえ、炭治郎さん……」

「ん? なに、無一郎くん」

 

 炭治郎さんは僕の名前を呼んで、笑顔を向けてくれる。

 

 僕達のことをしっかり見分けられる炭治郎さんは、名前を呼んでくれる。

 他の人は間違えたら失礼だと思って、名前を呼ぶことは少ない。

 

 しっかりと名前を呼んでくれる炭治郎さんが、僕は好きだ。

 

 そんな炭治郎さんが……。

 

 

「炭治郎さんって、鬼なの?」

 

 
 問いかけではない。

 確認だ。

 

 僕と兄さんは、ほぼ確信を持っている。

 炭治郎さんが……鬼だということを。

 

 鬼を学んでいくうちに、血鬼術というものを知った。

 人間には出来ない、異能の力を使うと。

 

 炭治郎さんが兄さんの腕をくっつけた技。

 あれは確かに異能の力で……血鬼術だった。

 

 僕の確認の言葉に、炭治郎さんは一瞬だけ目を見開く。

 そして……少し悲しそうに、笑う。

 

「……うん、そうだよ」

 

 炭治郎さんは全く否定せずに、自身が鬼殺隊に狙われ、殺されるべき鬼だと自白した。

 

「いつから気づいてたの?」

「……兄さんが目覚めて、すぐくらい。どうやって腕を治したか話したときに」

 

 兄さんは自分の腕を斬られたことを覚えていた。

 記憶は曖昧で、あの時に神様が来て自分の腕を治してくれたと思っていたらしい。

 

 だけどもちろんそうではなく、炭治郎さんが治したと僕は教えた。

 

 そして二人で考えた。

 すぐに答えは、出た。

 

「そっか……ごめんね、騙すような形になって」

 

 炭治郎さんは縁側に座って、申し訳なさそうに言う。

 

「二人に……嫌われたくなかったんだ。自分が鬼だって言うと、怖がる人が多いだろうから」

 

 ……炭治郎さんはそう言うが、僕達の思いをわかっていない。

 

「炭治郎さんって、匂いで人の感情がわかるんだよね?」

「えっ、うん、そうだけど」

「じゃあ俺達の匂いに、怖がる匂いはあるのか? 炭治郎さんを嫌ってる匂いが、俺達からしてるか?」

 

 兄さんと僕は少し怒りながら、炭治郎さんに言った。

 

 一瞬だけ炭治郎さんの鼻がヒクッと動いたのが見えた。

 あの仕草、結構可愛くて好き。

 

「……全くしないね」

「そうだよね。どんな匂いがする?」

「尊敬と、感謝……かな」

 

 炭治郎さんは僕達の匂いを自分で言うのが恥ずかしいのか、少し照れながら言う。

 可愛い。

 

「そうだよ。僕達はすごい尊敬してるよ、炭治郎さんのこと。だって僕達を助けてくれて、とっても強くて、炭治郎さんを僕達は目指してる

んだ」

「俺も……感謝してる。命を救われた。腕を治してもらった。本当に、炭治郎さんには感謝してる」

「二人とも……ありが」

「だ、か、ら!」

「……えっ?」

 

 炭治郎さんが感動しているところを申し訳ないけど。

 多分、今僕の匂いを嗅いだら、怒ってる匂いがすると思う。

 

「炭治郎さんが僕達に嫌われていると思った、っていうのが逆に許せない! そんなことで嫌うわけないのに!」

「あっ、その……ごめんね、無一郎くん」

「というか本当に鬼なのか? 全然見えないけど。今だって、普通に太陽に当たってるし」

 

 そう、それは思った。

 今まで数十匹の鬼と戦ってきたけど、炭治郎さんのような鬼なんて全く見たことない。

 

 理性もしっかりあって、落ち着いている。

 

 それに一番鬼っぽくないのは、太陽に当たっても平気なことだろう。

 

 鬼の唯一の弱点と言ってもいい、太陽。

 太陽が弱点だからこそ、日輪刀で頸を斬ったら死ぬのだ。

 

「……うん、二人には、話してもいいかな」

 

 そして僕達は、炭治郎さんがどうして鬼になったのかを聞いた。

 

 僕達のように山で家族と一緒に暮らしていたところに、鬼……しかも始祖の鬼舞辻無惨が来たと。

 そしてそれを、炭治郎さんが撃退したと。

 

「ん? ちょっと待って、炭治郎さん。えっ、無惨と戦って、撃退したの?」

「うん、そうだよ。頸も斬ったんだけどね」

「えっ、頸斬ったの? じゃあ殺したの?」

「馬鹿、炭治郎さんはその時に鬼殺隊に入ってなかったから、日輪刀を持ってなかったはずだろ」

「いや、俺が使ってた斧が、日輪刀と同じ素材を使ってたらしくて、本当なら殺せたはずなんだ」

「「えっ」」

 

 まさか炭治郎さんが上弦の弐だけじゃなく、鬼舞辻無惨すら殺せるほどの実力者だったとは……。

 本当に炭治郎さんは、僕達の一個上の年なのだろうか?

 

「だけど無惨は殺せなかった。あいつ、身体を透かして見たけど、心臓が7個、脳が5個もあったんだ」

「えっ、気持ち悪い」

「多分頸を斬られても死なないのは、それが理由だと思う」

 

 炭治郎さんは無惨を撃退した。

 だけどその後、かすり傷があることに気づいた。

 

 おそらく戦闘中に傷つけられたと同時に、無惨の血が入ったらしい。

 

 そして炭治郎さんは丸二日も眠り、太陽を克服した鬼となった。

 

「炭治郎さん……すごいね」

「ああ、俺達が思っていたより、何倍もすごかった」

「いや、全然すごくないよ」

 

 炭治郎さんは謙遜ではなく、本気で言ってるみたいだ。

 

 歴代の柱の中でも最強と言われている炭治郎さんがすごくないって、そんなわけないのに。

 

「俺は、鬼舞辻無惨を殺せなかった。次は……殺す。あいつは、悲しみの連鎖を、断ち切らないといけない」

「……うん。僕も頑張るよ、炭治郎さん」

「もちろん、俺も」

 

 僕達は縁側に座って、さんさんと輝く太陽を見上げた。

 

 

   ◇  ◇  ◇

 

 

「降りてこんか!!」

「やだぁ! やめてぇ!!」

 

 俺が修行している間に……また、あのカスが、先生の手を煩わせている。

 

 なぜ先生もあんなカスに構っているのか、全くわからない。

 

 ……もっと俺の修行を、見てくれればいいのに。

 

「そうだ、お前ら! 今度、柱の継子との合同訓練があるぞ!」

「っ! 柱……!」

「ああ、最近柱になったばかりの、日柱という柱じゃ。その継子もとても強いらしいので、良い鍛錬が出来るだろう」

「嘘!? 柱来るの!? 怖いよぉ!!」

 

 あのカスは泣きながらそう言っているが、俺はそうは思わねえ。

 

 良い機会だ……柱に俺の実力を見せる、この上ない状況。

 上手くいけば、俺も継子に……!

 

 いや、柱になったばかりだったら、柱の中で一番弱いのかもしれねぇ。

 手合わせをして俺が勝てば、俺が柱に……!

 

 なってやる、柱に……!

 認めさせるんだ、俺のことを、全員に……!

 

 

 

 


 

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