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前作は、こちらです。

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ラノベ作家のshiryuです。鬼滅の刃のSSを書きました。タイトル通り、炭治郎が最初から日の呼吸をすごくうまく使えていた…

 

 


 

 

その後、炭治郎はカナエから説明を受けた。

 

鬼は、ほとんど不死身であること。

生きている限り、どれだけ身体が欠損しようと再生する。

 

普通の人間よりも、身体能力が上がっていること。

 

それに対抗するため、鬼殺隊は独自の呼吸というものを使って、身体能力を上げて対抗している。

 

「えっ、呼吸って……疲れない呼吸のことですか?」

 

炭治郎は小さな頃、父さんに聞いた呼吸をずっとやっている。

そう、ずっと。

寝ているときも、無意識で出来るようになっていた。

 

「そうね。炭治郎くんが鬼だったから気づかなかったけど、それは確かに私たちが使っている呼吸。それも難易度の高い、全集中の呼吸・常中という技。それをすれば、他の人とは格段に身体能力が上がるの」

「ああ、だから俺は人よりも運動が出来たんですね」

 

カナエはそれを聞いて苦笑いをした。

 

常中をやっていれば、「人よりも少し優れている」程度では必ず収まりきらない。

 

普通の人の何倍、何十倍もの身体能力を得ているはず。

それに加え、今では鬼となっている炭治郎の身体。

 

鬼殺隊の中でも、身体能力で炭治郎に勝てる人はいないかもしれない。

 

「……炭治郎」

「はい? なんですか、冨岡さん」

 

隣で話を聞いていた義勇が、いきなり割って入ってきた。

カナエは義勇が自分から喋り出したことに驚いたが、その後の言葉にも同じように驚く。

 

「おにごっこをしよう」

「……はい?」

 

炭治郎も、カナエと同じように目をまん丸にしていた。

 

その後、説明もほとんどなしで日が差している外に出て、数メートル離れたところで炭治郎と義勇が対峙する。

 

それを周りで炭治郎の家族、それにカナエが見守っていた。

 

「お兄ちゃん、頑張れー! 冨岡お兄ちゃんに負けるな!」

「兄ちゃーん、次は俺ともやろうぜー!」

 

花子と茂が炭治郎にそう声をかけて、炭治郎は「わかった」と言うように笑顔で手を振る。

 

「まったく、冨岡くんったら……すいません、葵枝さん。同僚が炭治郎くんとおにごっこしたいって」

「いえいえ、大丈夫ですよ。炭治郎も冨岡さんと遊ぶのは、楽しいと思いますから」

 

炭治郎の母親の葵枝や、兄弟達は楽しそうに二人のおにごっこを見ようとしている。

 

しかしカナエ、それに当人の炭治郎と義勇は真剣である。

 

カナエの邸宅は「蝶屋敷」と言って、鬼殺隊の隊士の治療所として開放されている。

 

そこで度々行われる「機能回復訓練」という、負傷して固まった隊士の身体をほぐす訓練。

 

その訓練の中に、おにごっこがあった。

義勇も何度もやったことがある。

 

「じゃあ行くよ。お兄ちゃんが逃げる方で、冨岡さんが鬼。よーい……」

 

禰豆子が声を上げ、始まりの合図をする。

 

「はじめっ!」

 

瞬間――炭治郎と義勇は、消えた。

 

「えっ!? あれ!? 兄ちゃん達、どこ行った!?」

「な、なんか雪がすごい舞ってるけど……!」

 

炭治郎の家族の中で、二人の姿を捉えている人は誰もいない。

ただ地面にある雪が、爆発でもしたかのように舞っていることしかわからない。

 

葵枝と禰豆子、それに竹雄も声を出せずに二人がどこに行ったか辺りを見渡している。

 

唯一、花柱であるかなえだけが、二人の姿を追えていた。

 

(どっちも全力……それで、冨岡くんが勝てないなんて……)

 

一対一でやるおにごっこは、普通なら追う方が有利である。

手を伸ばせば当たる距離にさえ持ち込めれば、勝てるはずなのだから。

 

しかし柱である義勇でさえも、炭治郎にその距離まで持ち込めていない。

 

その距離になったとしても、圧倒的な反応速度で躱されている。

 

数分やってから、義勇が止まる。

それに伴って炭治郎も止まるので、ようやく二人の姿がしっかりと見えた。

 

「あっ、兄ちゃん達いた!」

「どこまで行ってたんだろう? いつ帰ってきたんだろう?」

 

家族全員は二人が遠くまで行ってしまったのかと思っていたが、二人はずっとこの近辺でおにごっこをしていた。

ただ速すぎて、見えなかっただけだ。

 

「……胡蝶、二対一だ」

「えっ? 私も入るの? しかも鬼側で?」

「ああ、いいだろう、炭治郎」

「はい! すごく楽しいですね!」

 

義勇は一人では捕まらないと確信したのか、カナエも呼ぶ。

 

少し戸惑いながらも、カナエは楽しそうに入ってくる。

 

「久しぶりにおにごっこするわねー。炭治郎くん、全力で行くね」

「はい! お願いします!」

 

そして、また炭治郎の家族には見えないおにごっこが始まった。

 

「またどっか行っちゃったね……」

「うん……近くですごい、風を切る音みたいのが聞こえるけど、それだけ」

「花子、茂。暇なら薪になる木の枝でも拾ってきてくれ」

「はーい」

 

竹雄が二人にそう言って、二人も逆らうことなく自分の仕事をする。

 

その際に二人は、炭治郎と義勇とカナエがおにごっこをしている範囲の中に入ってしまうが、全くそれに気づかない。

 

二人がおにごっこの範囲の中に入ってくるが、炭治郎達とぶつかることはない。

 

そんな失敗をするような三人ではなかった。

 

しかしやはりというべきか、カナエが鬼側に加わっても炭治郎には勝てなかった。

 

炭治郎の長い髪の毛一本すら触れない。

鬼殺隊の柱である二人が、本気を出しても。

 

完璧に連携が出来ているわけではないが、それでも一人よりも二人の方が強いはずなのに。

 

そして十分後、カナエと義勇が諦め、炭治郎の勝利で終わった。

 

三人とも全力でやったが、十分程度本気で動いたところで汗一つかいていない。

柱である二人はもちろん、炭治郎も息を荒げてすらいない。

 

「すごい楽しかったです! 初めて、本気でおにごっこしました!」

「ふふっ、よかったわ。だけどやっぱり、炭治郎くんって強いのね」

 

炭治郎は謙遜するが、柱二人が本気でやっても追いつけないのは驚きだ。

 

鬼としては、下弦の月では収まらず、上弦の月の強さと同等か、それ以上だろう。

 

(本当に、炭治郎くんが理性を保っていて、人間の心が残っていてよかったわ……)

 

「炭治郎くん、鬼の説明を全部説明してなかったわ」

 

どこかの誰かが、いきなりおにごっこをしようと言い始めたから。

その誰かは、全く表情が読めない顔でたたずんでいる。

 

「あっ、はい」

「鬼は不死身なんだけど、弱点があるの。それが、太陽の光。浴びると鬼は例外なく、燃え尽きてしまうわ」

「えっ? だけど、俺は……?」

 

義勇やカナエに鬼と言われている自分は、現在日の光に当たってもなんともない。

 

「そう、今まではそうだった。1000年間、鬼の中で太陽の光を克服する者はいなかった――あなたを除いて」

「1000年間……」

 

1000年という長い年月を聞き、自分がどれほどの例外であるのかを少しずつ理解する炭治郎。

 

「そして原初の鬼である、鬼舞辻無惨の目的は……太陽を克服すること。つまりあなたのことを知られれば、おそらくあなたは鬼舞辻無惨に狙われることになってしまうわ」

 

カナエは炭治郎の境遇に、心を痛める。

 

呼吸を使えるという以外は、普通の子だ。

家族思いで、すごく優しい男の子。

 

それなのに鬼の血を浴びたことによって、鬼となってしまい。

理性を保っているにもかかわらず、このままでは鬼殺隊に狙われてしまう。

 

そして太陽を克服する存在であるために、鬼舞辻無惨にも狙われることになるだろう。

 

人間からも、鬼からも仲間がいない。

そう考えると、カナエは胸が張り裂けそうだ。

 

「あっ、兄ちゃん! おにごっこから帰ってきたんだ!」

 

そのとき、茂と花子が木の枝を拾って帰ってきた。

 

炭治郎は二人に近づき、多く抱えてきた木の枝を持ってあげる。

 

「お兄ちゃん、ありがとう」

「ああ。二人も、拾ってきてくれてありがとう」

「兄ちゃん、あとで俺ともおにごっこしよう!」

「ああ、いいぞ」

 

楽しそうに三人は、笑いながら家まで歩いていく。

家の中から、家事をしていた禰豆子と母親の葵枝が出てくる。

 

そこに木を切っていた竹雄も来た。

 

カナエはその幸せな家族を見て、少し勘違いしていたことに気づいた。

 

炭治郎が鬼なのは、間違いない。

そして太陽の光を克服したので、これから鬼舞辻無惨から追われることになる、ということも。

 

しかし仲間がいないなんてことは、なかった。

 

むしろ炭治郎には仲間なんかよりも大事な、家族がいる。

絶対に切れないであろう、家族の絆があった。

 

炭治郎の家族を見て、カナエは殺された両親を思い出し、そして蝶屋敷にいる妹のことを想って会いたくなった。

 

 

カナエと義勇は、また来るということを炭治郎に伝えてその山を下りた。

 

「冨岡くん、このあとどうする?」

「……どうする、とは」

「お館様に、どう報告する?」

「……俺には関係ない」

「えっ、どういうこと?」

 

すでに自分達の鎹鴉が、お館様に報告しているだろう。

 

それに報告をするにしても、手紙が下手な俺よりも胡蝶カナエがやった方が、必ずしっかり詳細をお館様に伝えてくれる。

 

だから、「俺には関係ない」

 

そう言って義勇は、カナエを残して次の仕事に向かった。

 

「はぁ……やっぱり冨岡くんは、何を言っているのかわからないわ……」

 

 


 

 

次の話はこちらです。

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ライトノベル作家のshiryuです。鬼滅の刃のSSを書きました。炭治郎が最強だったら、というお話です。鬼化炭治郎で最強で…

 

 

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